2015/03/16
こんにちは、北山です。前回に引き続きMWC2015の紹介をさせていただきます。
ウェアラブル分野で先進的な取り組みと言えば「muse」でしょう。これはヘッドバンド型の脳波計で、読み取ったデータをBluetooth経由でデバイスに送ることができます。脳波の識別からヘルスケア分野や新しいコントローラとしての利用が期待されています。
今回この場での新しい発表は特にありませんでしたが、ヘルスケア分野で既に活用されていること、サードパーティへのSDKの提供や新しいコントローラとしての試み(脳とのconnected)などの展開が語られました。
読み取られた自分の感情に合わせた音楽や照明を設定する取り組みも紹介されていましたが、無意識も「繋がる」ことで想像以上の利便性が期待できると共に少し怖くもありますね。
講演者によるmuseの実演
museでつながるヘルスケア、車、家
このテーマでは製品デモよりコンセプトデモ、さらにコンセプト動画レベルの展示が多い印象で、実現はまだまだ遠いことを物語っています。
AT&Tは基調講演でコンセプト動画を流し、身の回りのデバイス、企業、公共のセンサーがつながることでより効率的でセキュアで便利な生活を描いています。
同等のコンセプト動画がyoutubeにあがっているので興味のある方はご覧ください。
SAPとTelefonicaは、街中に設置したセンサーを駆使することで旅行者によりスマートに観光案内を行えるというコンセプトデモを紹介しています。
観光地の混み具合や気温、ユーザの好みを踏まえて行き先プランを提示、プランをダウンロードしたスマートウォッチより案内、行き先にメンテナンス工事など問題が生じた場合は代替案を提示、などのストーリーです。このようなシステムで旅行者、店、住民それぞれにより快適な旅行、顧客の増加、街の価値向上のメリットが生じると説いています。
左:デモシステムより提示された観光地。待ち時間や混み具合、口コミ情報を表示。
右上:スマートウォッチ上での行き先が閉鎖されたお知らせ
右下:新たな行き先の提示
他にはGemaltoにて協調動作する配送車のデモを車の模型を使い行っていました。それぞれの車の状況をセンター側で一元管理し、1台に問題が生じた場合1台がフォローに向かうと言うものです。ちなみにこのようなシステムを実現する上で最も難しいのは車が現状を認識すること、特に天候など時々刻々と変わる状況を捉えることとのことでした。
このようにIoTではまず個々のデータをセンターに(クラウドに)集める前提です。今年このテーマでGlobal Mobile Awardを取ったJasperはIoTをクラウドベースで管理する基盤を紹介しています。農作業の効率化、マーケティングのリアルタイム化等が謳われていました。
IoTによる農作業の効率化
今回サムソン、LG、huawei、ZTEなど中国、韓国企業のブースが大きく目立っていましたが、新しいデバイスで攻めていたのもこれら企業でした。
LGは鏡台にタブレットを埋め込んだ「マジックミラー」を展示。これが見た目もクールでインパクトがありました。鏡上の情報表示、タッチ操作の他、上部に埋め込まれたカメラから肌質をチェック、自分に適したスキンケア情報を見ながらお化粧をするという明快なユースケースが提示されていました。リリースは「soon」とのことです。
その他ZTEがタブレットを埋め込んだスマートプロジェクターを紹介。
プロジェクターの上部に埋め込まれたタブレットから好きなコンテンツを直接投影可能。
サムソンがスマホで開錠できるドアを紹介していました。
Bluetoothを使いスマホでドアを開錠。Bluetoothの電波強度による位置推定や電波がドアの裏表どちらから来ているかを加味することでセキュリティレベルを向上。
国内ではSONYが声で操作するガンダムのハロのようなガジェットを展示しています。
「今日の予定は?」「明日6時に起こして」など音声で操作するスピーカー
5Gはまだ規格が統一されておらず各社提案している段階ですがそれぞれの狙いはとてもよく似ており、IoTを見据えた
・キャパシティ拡大:デバイス数の増大
・低消費電力:小さなセンサーの利用
・低レイテンシ:自動運転など遅延の許されない用途を想定
等が謳われていることが特長です。
エリクソンのスライド
ドコモのスライド
ドコモでは5Gの実用化に向けて下記8社との共同開発を進めており、実験にて下り4.5Gbps以上のデータ通信実験に成功したとのことです。
Connected Car、ウェアラブル、IoT、デバイス、ネットワークと紹介してきましたがそれぞれがより「繋がる」ために少しずつ広がってきていることが見て取れたのではないかと思います。反面、ユースケースについては単発商品としての提案はあったものの、さまざまなデバイスが繋がった世界についてはまだコンセプトデモ/動画レベルであったことも否めません。前半編で書きました、「”everything connected”状態で世の中がどう変わるか?」の問いに対しては明確な答えは無いものの、各社の展示、提案から大きく三つの流れがあると考えます。まとめると下図のようになります。
下に行くほど機械による判断が必要となり、技術的にも要求レベルが高くなります。今回の展示では、これらを実現するためのパーツをそろえつつ、ナビゲーションは商品レベルのデモまで来ている(そのためConnected Carが盛り上がっている)のかなという印象でした。残り二つについては今後数年内に実現されたものが各所で見られるのではないでしょうか。今後も楽しみですね。
というところで視察記も終了です。長文にお付き合い頂きありがとうございました。