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MWC 2015 視察記 ~前半~

2015/03/11

MWC

Hola! (こんにちは) 北山です。今回は先週バルセロナで行われました世界最大級のモバイル分野のイベント、MWC2015の模様をお伝えいたします。

■MWCとは?

MWC(Mobile World Congress)は、毎年この時期に行われるモバイル分野の世界最大級の見本市です。モバイル分野に関係するものであれば何でも出展可能であり、展示内容は幅広く網羅されています。参加者は年々増加し今回は9万人を超えたとのこと。
開催時期に合わせ新製品が発表されることも多く、開催期間中はその情報で賑わいます。東京ドーム4個分はあるメイン会場に所せましと様々な製品が並び、それを見る人々でごった返しの状況ですが、ここに来ればこの分野で今何が起こっているか、俯瞰することができます。

MWC

目抜き通り。会場中人だらけ

また、ビジネス寄りのイベントであることも大きな特徴の一つです。
会場にはその場で商談を行うためのクローズドなブースが数多くあり、アポイントがなければ入れません。
また一般向けのブースでも法人向け商品だと会社によっては興味本位な問い合わせに対応する余裕がありません。明らかにビジネスにつながらないがお話を聞きたい時は、先にそう伝えるのがお互いにとって良いようです。

MWC
会場中あちこちに見られる関係者以外立ち入り禁止区域

■今年のテーマは?

公式メッセージは"The edge of innovation"ですが、事実上メインテーマは ”connected everything”と言って良いでしょう。様々なデバイス、センサーがネットにつながり、リアルタイムな情報収集、相互のコミュニケーションが可能となる世界。それを実現するための新しいデバイスであり、ウェラブル、車、ネットワーク、セキュリティと各社バラバラに見えた展示内容が全てここに繋がってきます。
今回視察にあたり、「では”everything connected”状態で世の中がどう変わるのか?モノがネットに繋がることで生まれる、単なる足し算ではない、ユーザへの新しい体験とは何か?」を見極めるべく、展示に臨みました。
それではテーマごとに紹介していきます。

■Connected Car

今回会場で最も目についたのはいたるところに置かれた車達です。全部で100台くらいあったのではないでしょうか。
どこを見ても写真写りの良い車であふれていました。中には展示と無関係な車をアイキャッチとして置いてる例も。
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会場中車だらけ。最後の車は展示内容とは無関係とのこと。

Connected Carのコンセプトはどこもよく似ていて、
・運転席へのタブレット埋め込み
・リアルタイムな地図表示
・運転状況のトラッキングによる安全運転指南
・スマホ連携(ボイスコントロール、鍵認証)
辺りが謳われます。

その中でも面白かったのは、Qualcomm Snapdragon(モバイル向け統合チップ)のカーソリューションデモで、ダッシュボートのみならずバック/サイドミラーもモニター化したものです。
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通常のミラーより視野角が広いとのことですが、運転状況に応じて運転者が見るべき情報をプロアクティブに変えても面白いと思います。

またAT&TとAudi が共同で開発したAudi connectでは、ドライブモードを選ぶとそれに合わせ車内のライトやシート、ハンドル等が調整されるという機能がありました。
ユーザーからのシンプルな選択から、多数装置の設定を一度に変更し望まれる状態を作り出すこと(オーケストレーション)は各装置をつなぎ統合する一つのメリットですね。
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ちなみに基調講演の中で日産のCEO カルロスゴーン氏が自動運転について語っています。その実現には3段階あり、2016年までに渋滞時の運転を、2018年までに高速道路でのレーン変更を含めた運転を実施する、ただし市街地を含めた自動運転は様々な課題があり2020年までかかるだろうとのことです。先月発表されましたアップル社のEV開発参入については新しい風が吹き業界が盛り上がるのはよいことだとしていました。

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■ウェアラブル

スマートウォッチ、活動量計は各社出そろった感がありますが昨年から比べるとずいぶんスマートなデザインが増えたなあという印象です。ファッション界からの参入も一つの流れとなってきています。
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GUESS製のスマートウォッチ。下部1行のディスプレイに通知表示

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SWAROVSKIの様々なスタイルが楽しめるアクティブトラッカー。女性には生活シーンに合わせた多様性(versatility)が必要とのこと

変わったところではHuawei のTalkBand N1というイヤホン型Mp3プレーヤー兼アクティブトラッカーが目を引きました。

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音楽を聴かないときはネックレス状にできます。HiFiステレオ他、歩数記録、着信通知など今時の機能が盛り込まれています。複数のウェアラブルデバイスを付けて回るのも煩わしいのでこういった一通りの機能を盛り込んだデバイスは増えてきそうです。

さてそもそもスマートウォッチは何のためにあるのでしょうか?
講演の中でPebble(世界で最も売れているスマートウォッチの一つ)のファウンダー兼CEOの Eric Migicovsky は、「スマートウォッチは人々が自分の習慣を無理に変えることなく、物事を成し遂げる(get stuff done)ためにある」と語っています。
Pebbleは面白いプロダクトで、少し紹介しますと、今時白黒(新製品では64色になりました)のディスプレイに、タッチパネルではなくボタン操作としたその代りに常時画面表示にバッテリーが数日持つという非常に割り切った仕様となっています。サードパーティにアプリ開発環境が提供されており、現在7,000近いアプリが利用可能です。ユーザはTODOリストや睡眠時間トラッカー、電卓やカメラの遠隔操作から果てはテニススコアのカウンター、バーベキュータイマー、ピザ注文アプリと好きなアプリを自分がしたいことに合わせて時計にセットすることができます。
この、「ユーザが時計を通じ好きなことを実現してほしい」という思いがスマートウォッチに最も精通すると言えるEricがたどり着いた一つの答えのようで、新機種ではもっと自由に、ソフトウェアのみならずハードウェアもサードパーティに開放すべくハードのポートが解放されています。

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講演にて新発表されたサードパーティ用のハードウェアポート

・今後メーカーは新しいセンサーのためにデバイスを新たに開発しなくてもよい
・Pebbleをスマートフォンの周辺機器でなく、独自のコンピューターとして生態系を築いていく
・Pebbleを使い捨てにせず持続させていくことが最終的な目標だ
とのことですが、Pebbleの商品戦略からスマートウォッチの動向が伺える気がします。まさしく今Apple Watchの話題が盛り上がっていますが、スマートウォッチが一過性のブームで終わるのか、スマートフォンのように浸透していくのかはこの辺りが分かれ目となるかもしれません。

(後半に続く)