TOPIC

「改善し続ける」「思い込みを捨てる」グロースハックに必要なこと

2016/05/02

gooのマーケティング室ではサービスをGrowth(成長)させるための手法/情報の共有を行う場として、社内ブログ「グロースハックブログ」を更新しています。今回はその記事の中から、「goo住宅・不動産」「goo自動車&バイク」「gooヘルスケア」で実施したA/Bテストと、「Kaizen Platform」カスタマーグロース担当の岡田さんのインタビューを交えて紹介します。

Kaizen Platform カスタマーグロース担当の岡田さん

――Kaizen Platformはどんなサービスですか?

岡田(敬称略):世の中のサイト改善をする人を応援するプラットフォームです。現在は、Webサービスを改善したい企業に対し、デザイン案を募れるグロースハッカーネットワークと、ABテストを用いたサイト改善を彼らとオンラインで協業して行うツールを提供しています。今後は広告においてもABテストが実施できる仕組みを提供していく方向です。

リモートワークで働く仕組みを広く世の中に提供し、女性の働く機会の創出や地方活性化などに貢献していくことも社として重要な方針の一つです。 2016年3月現在、グロースハッカーとして3,000名程度が登録しています。

Kaizen Platform

――岡田さんもリモートワークで働いているのですか?

岡田:出社するのは週に3日程度で、時間、場所の制約なしに働いてます。

――セールスパートナーを増やす取り組みも行われていますね。

岡田: まだまだ世の中では、サービスの改善をしつづけることの重要性が充分に伝わっていません。現在のグロースハッカーの仕事はクリエイティブを作成する仕事になりますが、今後はディレクションや営業をしていただけるパートナーを増やしていくことで新しい市場の開拓を狙っています。

――A/Bテストツール「Optimizely」との違いは。

optimizely

岡田: Kaizen Platform はA/Bテストツールに閉じていないので、取り組みそのものが違います。弊社のサービスは視点が異なり、実際にお客様が継続的な改善を続けられ、成果を上げることを重視しています。そこで最初の仮説設計が重要と考え、力を入れています。グロースハッカーにどういう視点で改善案の作成をしてほしいかという部分に注力して、オリエンシートを作っています。

――gooサービスのA/Bテスト事例を解説を交えて教えてください。

岡田: レゾナントでは現時点では自動車、住宅、ヘルスケアの結果が出ていますが、3つのサービス毎に全然違うABテストのやり方でしたので、大変興味深かったです。

自動車とヘルスケアのテストで共通しているのは、ユーザー目線に立ってデザインされた案を採用しているということです。ヘルスケアに関してはメインターゲットである女性ユーザーが好むデザインを採用して成功したパターン。自動車はユーザーが求める情報がクリアになっていない状態でテストを開始しましたが、ラウンドを回していくことでユーザーの求めている情報が分かるようになってきたのではないでしょうか。

okadasan

米田:goo自動車&バイクは他の中古車情報サイトも並行して利用しているユーザーが多く、中古車物件情報を探すことに慣れたユーザーが多いです。確認すべき情報を知っているユーザーが多いため、検索結果ページの情報を削ると物件詳細ページへの遷移数・CTR(クリック率)が下がりました。見積もりボタンの文言についてもA/Bテストを重ねた結果、「お問い合わせ」といった敷居の低い文言ではなく、「在庫確認」「見積もり」など直接的な文言を使ったほうがCTRが高く、単に大手競合サイトの真似をすれば良いわけではないと分かりました。A/Bテストでユーザーの傾向まで把握することができたのは、期待していなかったメリットです。

岡田: Kaizen Platformに登録しているグロースハッカーにはgoo自動車のユーザー層と同じ30−40代の男性がたまたま多いので、ユーザーの心理に寄り添った案が多く投稿されていました。

autos_kaizengoo自動車&バイク グロースハッカーから寄せられた改善案

米田:自分が今まで怖くて実装できなかったデザインや、思いつかなかったデザインを試すことができたのは本当によかったです。それまでファーストビューにボタンが必要だと思い込んでいたのですが、グロースハッカーからは物件写真の下に見積もりボタンを配置した案の投稿がありました。CTRは103%程度の改善でしたが、見積もりボタンを押した後のコンバージョンが改善していることが分かりました。大きな写真をじっくり見た後でボタンを押したほうが、ユーザーは納得感をもって最後のページまで進んでくれるということ。A/Bテストのおかげでユーザーの心理に寄り沿ったUIに改善できました。Japan Growth Hacker Awardsで「担当者には必ず思い込みがある」とあるグロースハッカーが仰っていましたが、その言葉を実感したテストでした。

■goo自動車テスト事例

【事例紹介】中古車物件詳細ページ(PC)

中古車見積ボタンのクリックの最大化を目指して、(1)ボタンデザインの変更(2)レイアウトデザインの変更(3)情報エリアの整理を依頼。サービス担当者側では見積ボタン(アクションボタン)はページ上部にあるほうが良いと考え、最上段に置いていました。対するグロースハッカーの案は、インパクトのある写真を上部に置くデザイン。画像を見て気持ちが高まった後のほうが、ボタンが押されるという仮説でした。

autos_kaizen

結果:見積ボタンをページ下部に置いたパターンがオリジナル比140%で勝利。1月に物件詳細ページのデザインリニューアルを実施。実装後、CTRは103%にとどまったものの、CVRが101%、CV数は128%に増加

 ■gooヘルスケアテスト事例

事例紹介:直帰率の改善

スクロール率を計測から病気詳細の説明文の最後まで到達してるユーザーが30%という事実を踏まえ、文章が長いためユーザーが離脱してるのではないかと仮説をたてコンテンツの表示を工夫したUIを募集しました。

health_test1
結果:病気の説明文を最初の3行のみ表示し、カテゴリごとにトグル表示にした案が117%で勝利。この案をベースに色やレイアウトを変更してみましたがこの案以上に数値改善できたものはありませんでした。

――グロースハック及びABテスト成功のカギは何だと思いますか?

岡田:それぞれのサービスを利用しているユーザーの背景や属性を理解することです。そして、それを理解するためにはテストを実施していくしかないと思っています。答えを持っているのはユーザーですので、ユーザーに聞くのが一番です。

――他社事例でgooサービスに参考になりそうなものがあれば教えてください。

岡田:ユーザー属性が似ているサービスが参考になると思います。例えば、goo自動車&バイク、goo住宅・不動産、goo求人&転職は、集客をSEOに頼っており、広告出稿を行っていません。ターゲットワードで広告出稿しておらず、自社より上位に表示されているサービスを参考にするのがいいと思います。

今回のインタビューはサービス改善についてお伺いすることができて、とても参考になりました。サービス担当者はついつい「一気にリニューアルしたい!」と思ってしまいますが、実は細かな改善を繰り返したほうが効率的。「思い込みを捨てる」という言葉、胸に刻んでサービスを成長させていきたいと思います!