2015/04/07
みなさんこんにちは。gooの米田です。
前回に引き続き、SXSW2015における日本勢の活躍についてお伝えしていきます。
前回記事:【SXSW2015】ロボットに空飛ぶ車…未来を感じるトレンド5つ
Music、Film、Interactiveの祭典であるSXSWでは、街全体がロックフェスのような賑やかさ。会場周辺の至るところでパーティやライブが行われています。
SXSWオープニングパーティ。連日街もどんちゃん騒ぎ
Twitterがブレイクしたスタートアップの聖地であることはもちろん、このカンファレンスとは思えぬ開放感が魅力となって世界中から参加者が集まります。日本人の参加者・出展者も年々増加しているのだとか。そして、今年はそんな日本企業の一つが快挙を成し遂げました。
博報堂グループのクリエイティブエージェンシーSIXが開発した「Lyric Speaker(リリック・スピーカー)」が、スタートアップコンテストのアクセラレーターでBest Bootstrap Companyを受賞しました。同賞は全部門の中で、「目立った出資を受けておらず、最も創造性と可能性にあふれ、今後飛躍するであろうチーム」に贈られる賞。アジア初の受賞者となりました。
Lyric Speakerは音楽と同期して歌詞が表示される次世代型スピーカーです。スマートフォンで音楽を再生すると、スピーカーと一体になったスクリーンに歌詞がグラフィックとして表示されます。
https://www.youtube.com/watch?v=AE3YEb1N6HE
前回記事で紹介したFOVE、handiii以外にも、今年のトレードショーでは日本の展示がどこの国よりも目立っていました。
世界初の指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」は、ジェスチャ認識を300%、ジェスチャー反応スピードを10倍にした新バージョン「Ring ZERO」を展示しました。初代Ringが多くのメディアに取り上げられたこともあってか、Ringブースはかなりの盛況ぶり。
新バージョンRing ZEROに自信をのぞかせる吉田卓郎CEO
東京大学関連のスタートアップ出展プロジェクト「TODAI TO TEXAS」は総勢10チーム、ハードウェアのスタートアップを支援するDMM.make.AKIBAは11チームで参戦。チーム全体で日本のものづくりをアピールしました。
Orpheは照明となり楽器ともなる、パフォーマンスに特化したスマートシューズ。この靴のソールには最新のモーションセンサ、100以上のフルカラーシリアル制御LED、 無線モジュールなどが内蔵されており、パフォーマーが履いて踊ると光の軌跡が生まれます。
Orphe:スマートフォンやタブレットで光の色や強さを操作することができる
Orpheをはいたロボティクスファッションクリエイターのきゅんくん。
機械工学を学びながらファッションとして着用するロボットを制作している
オープンソースでソフトウェアの改良ができ、3Dプリンタで主要部品を作るプリンタブルロボットPLEN 2。PLEN Project Companyの富田敦彦さんは、「元々プリンタブルでオープンソースというコンセプトは海外の方が訴え易いのでは、と思ったのがSXSWに出展した理由でした。日本では販売後のサポート体制まで含んだ製品としての完成度が非常に重要視されますが、DIYカルチャーのあるUSでは自分で手を入れることができるという所が注目されるようです。こうした価値観の違いに触れることが出来るのも、海外出展の特徴ですね」と、SXSWの手ごたえを語りました。
子どもたちにエンジニアリングを楽しんでもらうには最高のプロダクト
PLEN 2はクラウドファンディングも目標額に達したため、今後は量産出荷作業にとりかかると共に、国内外の教育及び研究機関とロボットを使った教育プログラムの開発を進めていきたいとのこと。
富士通と北里大学の漢方サービス「KAMPO ME!」は、未病に強みを持つ伝統的な漢方診断・治療をセンシング技術と機械学習に置き換える取り組みを行っています。ネコ型漢方ローラーやウサギ型の舌チェッカーなど、かわいいデバイスを使って症状を診断。将来はオンラインで漢方薬を購入できるようにするとのこと。自然の生薬で未病を改善する漢方は若い女性の間でも注目されていますが、診断時間が長く薬も高額になる傾向があります。ICTの活用で漢方が身近なものになれば、健康寿命を延ばすことに寄与できると語っています。
「Japanese traditional medicine!」と紹介すると参加者たちも興味深々
冒頭でご紹介したLyric Speaker以外にも、博報堂グループはユニークなプロダクトを展示しました。クリエイティブ・ソリューションカンパニー博報堂アイ・スタジオのクリエイティブチーム「HACKist」は、スマートフォンで書いた手書きのメッセージや写真、スタンプを手紙として届けることができるメッセンジャーボックス「POSTIE」を展示。アナログなあたたかさが響き、体験した参加者たちは一様に笑顔になっていました。
キャラクターのロから手紙が出てくるように見えるのがポイント
NHKエンタープライズのブースではダンボール製のVRビューワー「ハコスコ」と、360度映像を使ったホラームービーを展示。特定のシーンになると、ユーザーが自分で視点を変えて主人公と同じ体験を味わうことができます。着物姿にカメラをつけたヘルメットという奇抜なスタイルは、参加者の注目を集めていました。
お話してみると大変まじめに展望を語ってくれました
日本企業はC向けのハードウェアばかりでしたが、他の国ではB向けのソリューション事業やマーケティングツールを紹介するブースが多いです。SXSWの参加者には有名企業の幹部クラスやマーケティング担当者も多いので、その方たちをターゲットとした展示が多いのでしょう。街全体のお祭りムードも相まって気楽な雰囲気で商談ができるのも、他のカンファレンスとの大きな違いです。
日本からの出展企業の多くは、海外メディア掲載による認知向上や出資者を募ることを目的としていますが、小粒なプロダクトの連合チームは「おもしろいね」で終わってしまい、出資まで進むのが難しいのが現実。トレードショーの中で強いインパクトを与えるには、(1)ビジュアルが魅力的(2)ワクワクするような未知の体験ができる(3)社会課題を解決する――の3点が大事だと思いました。特に多くの海外メディアに掲載されたexiiiのhandiiiのように、直感的に理解できて社会貢献につながるようなものは強い。「ソーシャルグッド」は現代における最強のマーケティングと言えそうです。
セッションで未来を議論し、トレードショーで新しいサービスに出会い、パーティやミートアップで刺激的な情報交換。周辺で行われるライブやイベントも含め、SXSWはあまりに巨大で混沌としており、すべてを把握することはできません。だからこそ毎回新しい発見があるディズニーランドのように、何度でも行きたくなる場所になっているのでしょう。来年のSXSWではどんなサプライズが待っているのでしょうか。
チラシスペースになっている会場の柱。来年もgooシール貼りたい!
(スマートナビゲーション事業部 米田瑠菜)